2005.11.10

峠、奥鬼怒にて

いや〜随分とご無沙汰いたしました。
別にイヤになっちゃったとか、やる気がなかったとか、
軟弱者に成り下がったとかいう訳ではないんです。
本当に怪我や天気の関係で出来なかったんです。
いや…言い訳はいけませんね<(_ _)>すみません。

今回は、自転車ネタです。どうしても自転車で更新したかったのです。
で、機は熟した…。やりましたよ〜見てくださいネ!(^O^)

 

さて、こういうものには準備が必要です。月・火曜日連休の時の1日を使ってやるのが僕の掟。
綿密?に天気、風、気温、ルートを調べて、いざ出発ののろしを上げるわけです。
ところが、既に僕の得意な季節(夏)はとっくに終わりを告げ、高い山ではもう雪の便りが
聞かれるようになってしまいました。本当は距離で勝負したかったのですが、時間がかかるのと
ナイトランを余儀なくされる事で敬遠しました。なんせ昼・夜、平地・山間部では気温差が
20度近くになってしまうんですから…。おっと、前置きが長くなりました(>_<)
今回の装備はやはり最小限。自転車をばらして現地まで運ぶ事にしました。


 

左の画像は筑波山です。今朝5時に起床し、下道で日光方面を目指しました。
また日光?とお思いでしょうが、今回はちょっとヒネリを加えてみました。そう!3D技ですね(笑)
そして右の画像は今市市に入ったところです。だいぶ木々が色づいた所に来ました。


 

左→いわずと知れた日光杉並木街道ですね。木漏れ日がワクワクさせます。
右→車を今市の運動公園にデポしました。今日のいでたちは気温差に対応できるようにしました。


 

さ〜スタートです。時間は午前9時半。
向かっているのは、日光方面ではなく栗山村方面です。霧降高原の裏側と言えば分かりやすいかな?
目の前にドカンと構えるあの山をまず料理します。この川がなくなる先があの山です。
あの山々は1200〜2000mオーバー級の高さがあります。


 

平らな部分なんてあるのかよ!ってな感じでいきなり高度が上がっていきます。
なぜこんな道を選んだかといいますと、まず車がかなり少ない事、そして自然が豊富な事。
今日の目標は、山間だけで1日を過ごす事。
さて、看板見てください。熊!?ですか?冬眠前ですからね、それに各地で出てますし。
画像右→すそ野はまだこんな感じです。ちなみにr245青柳今市線を上がってます。


 

完璧な天候でしょう?暑いです。夏仕様になりたいくらいです。
道はこんな感じ。狭いです。登ってるの分かりますか?画像で分かるようだと結構きつい勾配です。


 

途中、つり掘り(管理釣り場)があったり、茶屋があったりしました。他には何もありません。
まったくもって自然そのままですね。快調に高度を上げていきます。


 

子供と紅葉した落ち葉をおみやげにする約束をしてきました。吹き溜まりにザックリ落ち葉が溜まっていました。
道路脇には何があるの?と思ったら、落ち葉をかき集めてネットに詰める人がいました。
こんな仕事もあるのかと関心してしまいました。しかし、こんな県道まで業者を入れるなんてスゴイ!


 

だいぶ高度を上げました。この辺で標高1000mくらいでしょうか。山も完全に色を変えています。
ほぼ頂上に近づくと、サルが出てきました。突然飛びかかってくるのではないかとデジカメを
構えるのも不安です。このあともあちらこちらでサルと遭遇しました。


 

今市市と栗山村の境界の峠には大笹牧場があります。登ること20km。
ここは標高1070mです。スタート地点が標高360mでしたから、710mの標高差ですね。
ちなみに筑波山は参道入り口から筑波神社までが4km、標高差220mですからだいぶハードです。
ここからは一気に青柳平まで5km、標高差370mを下ります。またサルが大勢いました。


 

青柳トンネルを越えるとすぐに栗山発電所がありました。山もだいぶいい色づき方ですね。


  

もみじの下を流れる川は鬼怒川です。このあたりがとても綺麗でした。


 

蛇王の滝です。紅葉の中を落ちてゆく様は本当に素晴らしいものでした。
それにしても今まで1台も自転車乗りに会ってないなぁ…。


 

道は相変わらず登り基調です。降り注ぐ日差しが心地よいです。
かなり奥深いところまで来たという感じがします。


 

栗山東照宮まで来ました。ここで初めての小休止。
戊辰戦争のとき、日光東照宮にあった家康座像と、二荒山神社の御神体がこの地に預けられていました。
その像を祀ってあるのが栗山東照宮だということです。さて、またトンネルです。長そうですね。


 

またトンネル。またまたトンネル。どれも同じ造りなのですね〜。アップダウンが激しいです。
どこを見ても山、山、山です。気温は丁度良く、自転車で走るには良いのかもしれません。


 

疲労感が出てきました。補給(エネルギーの)をゼリーで2回しました。自転車で1日走ると
相当なカロリーを消費するんですよ。エネルギーと水分の補給はこまめにしなければなりません。
ん?風が急に強く冷たくなってきました。右画像→枯れ葉が猛烈に舞っているのが分かりますか?


 

川俣湖です。雲が猛烈に厚くなってきました。嫌な予感がしますね。
天気予報では日本海側は降水確率が高いと聞いていたので、その雲がかかってきているのでしょう。
ここは栃木ですが、あの山の向こうは福島・新潟・群馬の県境がひしめくところなんです。


 

今日の目的地川俣温泉郷の「間欠泉」です。ちょっとした展望台がありまして、いつ噴出すか分からない
その瞬間を固唾をのんで待っています。天候が怪しいので、早く先に進みたい気持ちと、せっかく
苦労して来たんだから、見て帰りたい気持ちが交差します。そして…




きたー!それほど待たずして噴出してくれました。
お隣でカメラを構えていたご夫婦が「さっきちょっと噴出したんだよね〜」と言っていたので、
これはしばらくダメかなと思っていました。俺ってツイテル!?


 

さて帰ろう(戻ろう)と思っていたら、先ほどのご夫婦が「あれ〜?光徳からコッチに抜けられるのかな〜?」と言いました。ん?僕もどん詰まりだと思っていました。でも確かに向こう側から車が来ます。
「向こうから来た人に聞いてみましょうか!」と僕が確かめに行きました。すると答えは「YES!」。

おお!来た道の険しさと同じ景色を見ることのつまらなさを考えると、こちらの道は魅力的!
「よし!」天候と時間を考えると迷っている暇はない。選択肢にはなかった「奥鬼怒林道」を攻める事にしました。距離はおよそ25km。出る先は「戦場ヶ原」、おあつらい向きだね(^_‐)-☆ そそくさと出発したのは正午を過ぎていました。念のため、こちらに向かってくる人にもう一度舗装状況を聞いてみると、やはりOK!

登り半分、下り半分としても10km苦しめばすべては終わる。あとは長い下りでデポした車までGO!だ。
ところが… 目の前に現れた坂道は、九十九折の超激坂と言うにふさわしいものでありました。
それでも「やってやる!」という気持ちで満々でした。
これから待ち受ける洗礼を僕は予想もしていませんでした…。


 

登り始めて少しの間は、天にでも昇るかのような道にあえぎ声をあげながらも、まわりの景色が見えていました。
ふと振り返るとこんなにいくつも曲がりくねって来たのにまだスタート地点が見えるではありませんか!
「うわ!まじかよ…。大丈夫かな俺…。」そんなことを口にしながらも先に進む事だけを考えていました。


 

3kmぐらい登ったところで、足がつりました。突然の出来事に思わず自転車から降りました。
つったら早めに緊張をほぐしてやらないと、すぐまたつってしまうことを分かっていたからです。
だいぶ苦しかったのは、朝から山ばかり攻めているからだと思っていました。
振り返ると、なんとまだスタート地点がはるか下に見えているではありませんか!
ど…どうなっているんだこの道は…。

それでも攣っては道端に転がるように座り込むのを繰り返しながらも峠らしき石碑を見つけました。
標高1620m、そこは空気も薄く気温も低いところでした。「あぁ、ココまで来ればもう大丈夫だ。」
そう思っていました。ふと案内板を見つけて近寄ると…

「戦場ヶ原…あ、ここね。」 「あれ?現在地は書いてないのかな?」
よ〜く見てみると、ここはまだ2つ目の山の頂であるにしか過ぎなかったのです。
あと2つも山を越えなければならなかったのです。膝から崩れ落ちそうになるのをこらえていました。


 

なぜにここまでダメージを身体に受けてしまったか僕は分かっていました。
補給していないんです。
天候の変化に先を急いだのと、腹にオモリを入れてはいけないと思ったからです。
食べて激坂を登ると吐いてしまう事もあるからです。

もう一つ、最悪なことに補給食を車の中に置き忘れてきたのです。
高カロリーで吸収の早いエネルギーバーを用意していたのに…。
足の痙攣(けいれん)はハンガーノック(車でいうガス欠)によるものだと思います。
しまいには立っているだけで両足がブルブル震えるのがはっきり分かります。
押して歩くにも、その一歩が前に出ないのです。

そしてしまいには水すらなくなりました。もちろん水場も自動販売機すらもないのです。
あと半分、どうやって進めばよいか考えていました。
予備のために携帯していた詳細な地図を見つめ、地形を読み取っていました。
等高線の具合から、この林道は川俣側からは登り基調で峠はかなり先に行ってからだと分かりました。


 

ついに空が泣き出しました。雨が降って来たのです。予備のウインドブレーカーを着ます。
本降りにならない事を祈るのみです。たまに通り過ぎる車に助けを求めたい位に憔悴しきっていました。
もし、このまま全く身体が動かなくなった場合、日が暮れるまでに何とかしないとまずい…。
暗くなったらこんな道誰も通りはしないだろう…。
食料も水もない寒さをしのげるだけの装備もない。

遭難しないためには唯一、携帯電話が頼みの綱になるのだろうか…。
この山の中が「圏外」になっていないか調べる勇気すらこの時は持っていなかったのです。
それでも、少し漕いでは痙攣して休む。休んだらまた漕ぐのを繰り返しました。やるしかなかったのです。


 

雨がついには雪に変わった頃、目に入ったものは「日光市」の看板でした。
体中の血が騒いだ! 「抜けた!」 そう確信しました。
多くの場合、県境や市町村境は峠を基準とする事がほとんどだからです。
確かにその先の道は下ろうとしています。


 

下りきると、もはや山際に吸い込まれる寸前の太陽が覗き始めました。間に合った…(日暮れまでに)。
そして戦場ヶ原が出迎えてくれました(ただの原っぱなんですけど…)。
まさにこの峠は僕の戦場のように感じました(だいぶ大げさです)。
本当に苦しかった。
不思議に、達成感は湧いてきませんでした。
多分、危険を感じてしまったからでしょうね。


 

越えてきたのは「山王峠」、標高1740m。
川俣噴泉橋から21km登り、4km下る。着いたところは「戦場ヶ原」、標高1400m。
振り返ると、越えてきた山々がそびえ立っていました。
現在PM4:00


 

一番近いみやげ物屋に飛び込み、まずお茶をすすりました。
あら、梅宮さんこんなところで(梅宮辰夫の漬物屋らしい)。
食事はカツ丼(勝つだから!)がいいな〜と思いましたが…無い!(`Д´)ヾ
仕方なく、天ぷらそばで温まることにしました。


 

う〜 腹にしみる。
梅宮さんのところで土産を買いました。家族のご機嫌取り…じゃなくて、なめこが美味しそうだったから。


 

夕暮れの中禅寺湖を抜け、やはり渋滞している「いろは坂」へ。


 

そして長い長いダウンヒルを終えて車に戻ると、あたりは暗闇に包まれていました。
戦場ヶ原から1時間半下りました。下りも疲れます。
あの前傾姿勢を腕で支え続けるのが辛いのです。おまけにブレーキは握力計みたいだし。


 

近くの温泉に行き、風呂に入ってリラックスした後「カツ丼」を頼もうと思ったら、
ここにも無い!仕方なく「とんかつ」で我慢しました。
帰りはも〜眠くって、変なドリンク剤を買いました。¥410もしたんですよ〜。
コーヒーの濃〜い感じがする味でした。
そして無事帰還(いや、生還かな?)すると、今日の出来事を話している僕がいました。
聞かされる方も大変ですよね〜?

教訓→油断大敵。忘れ物厳禁。

走行距離 105.29km(すべて山道)
走行(乗車)時間 5時間54分
所要時間 8時間
MAX SPEED 62.0km/h
AVERAGE 17.8km/h
足のつり具合 半端じゃない程。
腹の減り具合 天ぷらそばとトンカツ定食じゃ足りない程。