2010.09

富士山『山ガール』調査。

 富士は日本一の山。
そう、カリスマ美容師として頂点を目指す者とすれば、ここ富士山に登り世間に息づく人間たちのヘアスタイルを、この目でしっかりと見届けなくてはなるまい。
ならば極めてみせよう日本一の山。

 というわけで、久しぶりにデジカメ画像でお届け致します。
ちまたでは『山ガール』なる人種が増殖しているらしく、その山ガール達のヘアスタイルにおける傾向と対策を、この目で見極めようということで僕が行ってまいりました(笑)。

 それでは山ガール調査隊、出発致します!

◆時は平成22年9月。世間では登山ブームらしく、中でも富士山では過去最高の入山者を記録したということです。
我が家でも登山ブームの波が押し寄せてしまい、ご近所登山(筑波山)に夏休み中5回も登ってしまう始末です。
テレビでは「富士登山の番組」が結構見受けられ、子供たちが影響を受けてしまい・・・「富士山登りたい!」と言い出しました。
となると、偵察がてら登らなくては父親として格好がつきませんからね^^

出発前の荷物を点検中です。
ザックは30リットルを用意していましたが、水を入れるとパンパンなので、このあと40リットルを購入しました。
ザックはお客様のア○さんのアドバイスもあってMILLETのものをGET!
水はハイドレーションにて2.5リットルをパッキングします。総重量10キログラム。



富士スバルラインを通って吉田口5合目に到着。
9月に入ったとはいえ、この人出。でも半数は中国人?午前10時をまわったところで、気温は25度です。非常にさわやか。
 

河口湖ICからここまで素直に来ると、コンビニがありません。早めの昼食は、おみやげ屋さんの2階の食堂で、なぜか豚丼。
食事の後は軽量化のためトイレへ。公衆トイレ以外はだいたい200円のトイレチップが必要です。山では水がとても貴重です。
 

さて、出発しますか。
さきほどツアーの方たちがスタートしていきました。「山ガール」はそこに紛れ込んでいるものと思われます。
吉田ルートは始めなだらかで、少々のアップダウンを伴ないながら6合目に向かいます。
 

雲の中です。富士山はご覧の通り火山性の砂礫(されき)の塊です。
さてこの吉田ルート、4つある登山ルートの中では2番目に長い距離を歩きます。駐車場が大きく、バスで入る団体客が多いのも特徴です。
山小屋の数も最大で、9月に入っても開いている小屋が多いためこのルートを選びました。

むむ?「山ガール」か?
なんかちょっと格好が違うぞ?かかとの高いサンダルにヒラヒラするミニスカート。
観光客として登山目的じゃなくてもここまでは来れちゃうのが富士山のいいところかもしれませんね?
6合目に到着、ここまでゆっくり35分。安全指導センターがあります。ここに常駐する警察官は8月いっぱい休みなし!
 

7合目に入るとこんな感じ。少しずつ険しくなっていきます。でもこれはほんの小手調べという感じですね。
おお?上部にツアー客確認!山ガールも存在すると思われます。
黄色いバンダナを巻いたお父さん、出だしからずっとペースが一緒です。お一人なんですかね?
ちなみに今回僕も一人です。つまり「山ガール調査隊」は隊員一人です(笑)。
 

これはペナルティーですよね。
富士山のごみ問題は深刻なんだとか。隠されるように捨てられた空き缶や、雨の後に雨具を捨てていく不届き者もいるそうです。
今となっては誰でも登れちゃう日本一の山、もしかしたら日本一ゴミが捨てられやすい山なのかもしれません。

7合目の山小屋群。
このように溶岩質の山肌です。このような火山灰の上に生育する植物は、すぐ乾く栄養分のない地面と強風に耐えられる種類のものがふもとから少しずつ取りついたもので、根を深く広く張って少ない水分を吸収しています。すごい生命力ですね。
 

山小屋の前にはベンチがあって休憩できます。半袖で上がってきても止まると涼しいので、脱いだり着たりを繰り返して
汗をかかないように、それが冷えないように気をつけます。ここまで1時間50分。

 

☆ちょっとひと息☆

 富士山の8合目以上は浅間大社(せんげんたいしゃ)の持ち物で、神体山(しんたいさん/神が宿るとされる山)とされています。また、富士山は活火山であり最後の噴火は300年前でした。歴史的に見ると100年に1度くらいのペースで噴火を繰り返しています。
つまりいつ噴火してもおかしくない状況なのです。もし噴火したら・・・最も恐ろしいのは火山灰がもたらす被害です。
その分かりやすい例が「関東ローム層」です。関東平野を覆うほどの灰や岩滓(がんさい/スコリア)は噴火の勢いがいかに凄かったか推測できますね。

7合目を過ぎるといきなり険しくなります。
山頂まで3.6km、まだまだありますね。
 

今回、僕はポールをグリップするのに自転車用の薄いグローブを持参しました。
特に下山の際ポールの上部を押さえて体重を支える時に有利でした。
それに欲しかったPROTREKの時計・・・時計なんて買うの十数年ぶりです。
時計の高度表示によると、只今2725mです。
 

どこにポールを突いてどこを踏むのか考えながら登るのは退屈しません。

本7合目(7合目の一番上)
金剛杖¥1200、結構みんな持ってます。それぞれの小屋で焼きを入れてくれます。
酸素缶は通常¥1500→¥1200になってました。酸素は「深呼吸5回すれば・・・」という話も。
 

 

8合目到着。ここまで3時間10分。
おっと山ガールやっと発見!髪型は〜束ねてるだけでした。でもカラーリングはしてますね。

 


この山小屋は8月末で営業を終了しています。
これからの時期に向けて厳重に準備をしています。
さて、ここで出だしから一緒だった若者2人組と一緒になりました。彼らの歩みは速い・・・でも結局追いつく。
ペース配分のし方もさまざまですね。若い人はこれでいいのかもしれません。
彼らの話が耳に入って来ました。「このおにぎり誰が食うんだよ、まだ5個も残ってるしカロリーメイトとかウイダーとか・・・。重過ぎ〜!」
思わず声に出して苦笑いしてしまった僕に、彼らはさらに口調が滑らかになり笑いを誘ってきました。
結局、僕がそのおにぎりを一つ買うことにしました。「山価格¥200で買いますよ(笑)」と。
すると「お金なんかいいですよ!もらってください。あ、カロリーメイトも付けます。」
僕は「¥200あればトイレ1回出来ますよ。僕も行動食少ないから欲しかったところですから。」と返しました。
¥200でおにぎりとカロリーメイトをGETした僕は、一足先に出発することにしました。
 

さて時刻は14時30分。
あれ?ここから先はずいぶんなだらかなんだな・・・。これがミスコースだったことは知る由もなく。
かたわらに生息する植物を見ながらゆっくり登っていきます。
実はこの道、ブル道(登山道ではなく物資を運ぶブルドーザーが使う道)で、この先は下山道です。
はるか向こうまで行きつつ、知らずに下山道を登る僕。
だいぶ登った頃、すれ違う人が「こんにちは!下山道を登って行かれるんですか?」
僕「え?(汗)下山道ですか?」
彼「そうです。戻ると気が変になりますから、このまま登って横にエスケープ出来るところから登山道に戻るといいですよ。」
むぅ。やっちまった。
ラジオなんか聞きながら余裕かましてたから、まったく俺ってやつは・・・必ず何かやらかすんだから(苦笑)。
 

考えたあげく、「このまま上に行っては男がすたる」と。
戻ってやり直しだと決めた僕は1時間かけて先ほど間違ったポイントにたどり着きました。
やれやれ。でもきちんと登山道を登らなくては子供たちをガイド出来ないのだ。
画像の右手に伸びていくのが「ブル道」。
自分の前に誰もいなかったのと、きちんと周りを確認しなかったのがミスを誘ったのです。
只今15時30分。

海抜3250m
あれ?先ほどの黄色いバンダナのお父さんだ。また一緒になった。
ここで山の向こうに日が沈んでいきます。
実は僕、先ほどのミスコースを戻るとき、かなり急いでしまいました。上がった心拍数が戻りません。
高地ではこういうことが引き金で高山病になってしまう事がよくあるらしいです。大丈夫か俺!
 

ついに僕が話しかけました。
このお父さん74歳。
僕「お一人ですか?」
お父さん「ええ。大勢もいいけど一人は気楽でね。自分勝手にやれるから。」
僕「最初から一緒ですがお気づきですか?」
お父さん「ああ(笑)その帽子ね。色がはっきりしてるから。」
僕「僕も一人です。勝手気ままに登りたくて一人で来ました。」
お父さん「実は富士山初めてでね。最後に取っておいたんですよ。テント担いで今まで色んなところに行ったなぁ。」
お父さん「メニエル病になってね、もう厳しいんですよ・・・。」
僕「明日はご来光をご覧になりますね?ではまた山頂でお会いしましょう。」
お父さん「ああ。楽しみですね。」

お父さん、お顔がツヤツヤでした。最初で最後の富士山にご一緒できてお話聞けて良かったです。
本日の宿「トモエ館」到着。
 

☆ちょっとひと息☆

富士山頂へは4つのルートがあります。山梨県河口湖方面からの「吉田ルート」、東側の小山町須走から「須走ルート」、御殿場からの「御殿場ルート」、そして南の静岡県富士宮方面から「富士宮ルート」。それぞれに素晴らしい景観が望めます。
吉田ルート→駐車場が大きくツアーバスの基地となっているため、団体客も多い人気No1のルートです。当然、ご来光渋滞もすごいです。歩行距離15.1km、登り5時間30分、下り3時間。
須走ルート→はじめ樹林帯を抜けるので自然を見ながら登れます。比較的利用者も少ないのですが、8合目で吉田ルートと合流します。歩行距離14km、登り5時間30分、下り3時間。
御殿場ルート→最も長くハードなルートで山小屋も少ないかわりに静かな登山が出来ます。下りは「大砂走り」と呼ばれる砂礫の斜面をスイスイ降りて来れます。歩行距離19.5km、登り7時間30分、下り3時間。
富士宮ルート→最短ルートですが岩場が多く、下りは脚に負担がかかります。登山道と下山道が同じなので面白みに欠けるかもしれません。歩行距離10km、登り5時間、下り2時間30分。
(所要時間は休憩を含まない目安となります)

本8合。只今16時50分、所要時間5時間15分(休憩、ミスコース1時間含む)。
ここから上の「富士山測候所跡」および「登山道」を除くおよそ95%は浅間大社に所有権があります。

「トモエ館」内部です。
到着した順にどんどん夕食を出されます。メニューはほとんどカレーらしいです。おそらくレトルトですね。
 

寝具は寝袋1枚のみ。スペースは寝袋の幅のみ。
今回はハイシーズンをはずしているので、あいだ1つ空けてくれました。1泊2食付き¥7500。
夕方6時にはすでに半数以上の人が横になっています。そして、7時過ぎには完全に夜中と化しました。
さて、寝ごこちはといいますと・・・僕はキャンプやスキーでの車中泊で慣れてたせいか平気でした。
でも、酸素が薄いのと気圧の低さ(700hPa前後)でミスコースしたときに上げてしまった心拍数が落ちません。
隣の人のイビキ対策に耳栓をしているんですが、自分の鼓動の方がうるさくてよく眠れませんでした(笑)。

山小屋からみた河口湖方面の夜景。
こちらからも下が見えるように、ハイシーズンのご来光集団が灯すヘッドライトの帯も下界から確認できます。

午前3時、ご来光集団は山頂へ向けて出発します。
昨夜と打って変わって、台風9号の影響で風がものすごいです。予報より早く近づいたようです。
フラッシュを焚いて撮影すると、砂塵が写っていました。ツアーは山頂を取りやめるか協議していたようです。
あ、山ガール発見!でも髪型なんてわかりませ〜ん(笑)。ほとんどが「山猿?(失礼、山ボーイ)」でした。
 

ヘッドライトを頼りに前の人に続きます。慎重に1歩づつ登ります。
格好を見ると山用品で装備している人は少なく、スキーウエアなどで代用している若者が多いですね。
 

鳥居をくぐって、ここは9合目標高3600m。酸素薄いです。
まわりの人たちもきつそうです。あちらこちらから「大丈夫?頭痛い?」という声が聞こえてきました。
 

最後の鳥居を抜けていよいよ山頂です。風がものすごいです。
砂塵が舞い上がって呼吸するたび吸いこんでしまいます。苦しいです。

そして登頂を完了し、しばらく待つことになります。
いよいよ東の空が赤くなり始めました。時刻は4時40分。
相変わらずの強風は益々勢いを増し、ツアーグループはお鉢めぐりを中止しました。
残念ながら僕も日本最高峰「剣が峰」をあきらめることにしました。

 


ご来光です。
眼下には「山中湖」「駿河湾」「相模湾」がはっきり見て取れます。
日本一の日の出です。


ほとんどが若者ですね。
勢いで登る、それも富士山。彼らは富士登山で何を思い何を掴んだのでしょうか。
手を合わせる者、万歳する者、抱き合う者、「山頂で吸う酸素(酸素缶)うめ〜」と叫ぶ者・・・(笑)。
それぞれの感情に訴えかけるこの日の出、これが富士山のご来光です。
 

山頂で味噌汁作って小屋でもらった弁当を食べる予定だったのですが、砂弁当になる事間違いなしなのでやめました。
ここで8合目でもらったカロリーメイトが役に立ちました。
結局、お弁当は錘(おもり)として5合目の駐車場まで大切に持ち帰りました(笑)。
 

早々に下山して行きます。5時45分下山開始。
吉田ルートの下山ルートはこんな感じが延々と続きます。勾配が急になると膝に来ます。
辛くなる前に持参した膝サポーターを付けて保護しておくことにします。
 

須走りルートと吉田ルートは途中まで共通の下山道を使います。
看板が出ていますが見落としてしまいそうです。
ここで間違うと、とんでもないことになります。タクシー呼んで須走り口から吉田口に戻ると\20000は超えると聞きました(汗)。
吉田ルートの分岐は山小屋の前を通る細い道になります。今度は間違わないぞ〜。
 

皇太子殿下がご宿泊になられた8合目「江戸屋」が分岐点でした。
下山しながらの景色も最高です。
 

7合目、ここでツアーグループに追いつきました。
山ガールが大勢いました♪  が・・・
まったく髪型は分かりません。とにかく風が強くてみんな辛そうです。
 

 

小さな石ころ1つ落とすだけでも大変な事故につながる事があります。
危険極まりない個所にはシェルターが設けられています。でも皆ここをくぐらないんです。
シェルターの脇に転がる石ころは落ちてきた石だと思われます。
 

5合目から7合目までは馬に乗って登ることもできます。
登り\14000、下りは\12000だったかな?
 

間もなく5合目に到着します。
着ていたシャツを脱ぎます。山頂の気温は2℃でしたからその差は20℃以上あります。
木々は強い風の影響で成長するにつれて横倒しになっていきます。それでも根付いている力強さはすごいですね。
 

8時30分下山完了致しました。所要時間2時間45分(着替え休憩含む)。
5合目駐車場から振り返ると、富士山がはっきりと見えました。
風が強かったお陰で雲が飛ばされているようです。

 富士山「山ガール」調査隊、任務遂行致しました。
もちろん髪型なんて分かるはずもありませんし、いきなり山頂に巻き髪盛りヘアの子がいたりしてもちょっとビックリしちゃいますもんね(笑)。
世間には流行りというものが常に存在しますが、この山ブームも決して悪いものじゃないと思います。
もっともっとお洒落して、純粋に自然を楽しみたいですね。
 お客様の中には、ずっと前から山ガールしていた方が大勢いらっしゃいます。そんな方々と世間話だけでなく、共通の趣味という観点でお話出来るともっともっと楽しく仕事出来るんじゃないないかなと、僕自身も期待しています。
 
そしてまだまだ「カリスマ美容師になるための修行」は続くのでした・・・。